岡山駅からほど近い岡山城の一角、長屋門が林原美術館の入口であった。
長屋門を入るとすぐに幅の広い階段が美術館へと導いてくれる。
敷地は高くなっているが、建築は地に伏したような姿が印象的だ。
庭から見る。
美術館の名称になっている林原は岡山で水飴から会社を大きく発展させて、ついには抗がん剤インターフェロンや甘味料トレハロースなどの開発に成功して財をなした林原一郎とその一族が起こした多くの社会貢献事業の一つ、とタクシーの運転手から教えてもらった。
日本の地方都市にはこうした事業家によって支えられた文化活動が少なくない。
静かな談話室。廊下から少し下がって、庭(左)と同じ高さで落ち着いた場所になっている。
廊下は中庭(左)と同じレベルとなっている。
中庭と庭、異なるレベルをこの廊下と談話室がつないでいるわけだ。
竹が植えられた静かな中庭。
石垣の上のコンクリートとレンガという異なる素材の組み合わせがここの特徴的な壁面を構成している。
前川国男は、多くの美術館、博物館を設計しているが、その最初の作品がこれだ。
このあと、埼玉県立博物館、東京都美術館、熊本県立美術館などの傑作を次々に送り出している。
この小さな作品には、それらの美術館建築に結晶してゆく、手法、アイディアの萌芽を見ることができる。
前川国男、58歳の円熟期に入ろうとする時期の味わい深い作品である。
コメントをお書きください