バルト三国の建築ーリトアニア〈ヴィリニュス〉

バルト三国 リトアニア ヴィリニュス

バルト三国への旅は、2018年6月10日出発。モスクワ乗り換え、リトアニアのヴィリニュスから始めた。

ヴィリニュスには3泊して旧市街を歩き回った。

まずは、ギリシャ神殿のような旧市役所。大きな広場に面した堂々とした建築。

旧市役所前の広場。ほぼ晴天、暑くもなく寒くもない。東京より約10度低い。

旧市街の中心地で3階建てが普通。

この文様、よほど気に入っているとみえていたるところでお目にかかった。

旧市街ではいたるところで、こんな道にであった。

多くの家は1階は店舗、2階、3階は住まいというもの。

手のひらくらいの丸い石を埋め込んだ道。昔の舗装道路だと思われるが、凸凹して非常に歩きにくい。建物はほぼすべてが煉瓦作り。

面白い建築装飾。植物ひげ男。建物の構造は煉瓦造、表面の仕上げは全て漆喰のコテ細工。コテ細工の腕前は驚く程高い。

きゅうすを埋め込んだカフェの壁。

幾何学的な窓まわり。キュービズム?

古い道。廻りの建築の壁面はすべて煉瓦。

中庭のレストラン。屋内にも広い部屋があるが、夏は、断然中庭が人気がある。6時くらいから続々と人が集まり、地元の若い人で一杯になった。演奏やパフォーマンスも始まるらしい。短い夏を思いっきり楽しもうとしている。

修復を終えた建築。一部意識的に下地の煉瓦壁を見せている。

煉瓦壁の下地を表した壁。

修復中の壁。修復が終わると煉瓦の壁は見えなくなるのだろうか。

古い城壁の一部。下の方は丸石。上は煉瓦。何百年にも渡って築かれた歴史が刻まれている。

空に浮かんだ街灯、ランプを吊るす曲線が実に美しい。日本の街の電柱や無骨な街灯がいかに空を汚しているか改めて考えさせられた。

聖アンナ教会(左)とベルナルディン教会(右)。

手前の聖アンナ教会が15世紀末に後期ゴシック様式で建てられた。

すごいのは、全部煉瓦で出来ていること。

イタリア、フランス、ドイツなどで見る教会建築は全て石造だが、この国では、石材が入手できなかったのであろう、全て煉瓦造である。ゴシックの細い部材が煉瓦で出来ている。さらに曲線が煉瓦で出来ている。信じがたい驚異の煉瓦建築。

正面入口の半円のアーチと尖塔アーチ、全て煉瓦。

正門の扉は鉄製。ユーモラスなドアノッカー。残念ながら、時間が折り合わず、中を見ることができなかった。

煉瓦だけでこれだけの建築を作ったというのは驚きだ。

1812年にロシアへ攻め込む途上で、ナポレオンはこの教会を見て、「フランスに持ってかえりたい」と語ったといわれている。ゴシック寺院の本場フランスから来たナポレオンにこう言わせたという自慢話である。

煉瓦は本来分厚い壁を積んでゆくのに相応しい素材である。ゴシックの細い部材を煉瓦で作るというのは非常に無理があるのだが、33種類の異なる形の煉瓦を焼かせて作り上げたというのだから驚きだ。

次にこの奥に見えるベルナルディン教会を見る。16世紀にできたというから、これもかなり古い。

内部はソ連時代に破壊されたと言われているが、見事に修復されている。全体はゴシック式の縦に高く聳える空間が特徴の聖堂。

煉瓦造だが、側廊には折り紙のような複雑な天井もある。

祭壇まえのステップと手摺。パロック様式の曲線が見事。ゴシックからバロックまで様式が混在している。

ここは木彫が多い。しかもなかなか見応えがある。

少し小憎らしい子ども(天使?)の表現が抜群。他の教会では彫刻がコテ細工ばかりなので1木彫りの木製の彫刻は新鮮だ。

この国はキリスト教、なかでもカソリックの教会が多いが、街中にはロシア正教の教会も少なくない。ロシアが支配した時代、多くのロシア人が移住してきたから今もロシア人が多く住んでいるからだという。

ロシア正教の教会は、椅子がない。参拝者は全員立ったまま礼拝を行う。

町外れにはこんな荒廃した教会もある。非常に興味深い建築だが、修復中なので中は見ることができない。

街の中には彫刻が多い。たぶん建国の偉人と思われるが、リトアニア語の銘板しかないので、理解できない。少しデフォルメされた具象的な表現は好ましい。

ガイドブックに解説がないのは残念。

旧市街の北東部にベルナルディン庭園がある。大きな樹木の生い茂った素晴らしい公園である。

子どもの遊園地には親たちが見守るように沢山のベンチが取り囲んでいる。

旧市街の東北のはずれにある聖ペテロ&パウロ教会。

真っ白なのは、全て漆喰の彫刻で覆われているから。2000体の彫刻があるという。

あらゆる壁面が彫刻で埋め尽くされている。

真ん中に下がっているのは、ノアの方舟か。

壁面を埋め尽くす寓意をこめた彫刻は、先生が生徒に聖書物語を聞かせる際の絶好の教材となる。こうして、子どもたちは繰り返し聖書の物語を叩き込まれるのである。

旧市庁舎の横に建つ聖カジミエル教会。外観は聖ペテロ&パウロ教会とそっくり。

帝政ロシア時代にはロシア正教、ドイツ占領下ではプロテスタント、ソ連時代には無神論博物館になったという数奇の運命をたどった。

豪華というか華やかな正面玄関。

ソ連に支配されていた時代にかなり破壊されたというが、修復されてすっかり爽やかな表情を取り返した内部。

この教会の見所は正面の祭壇まわり。一見、豪華な大理石と見えるのだが…。

私の推測では、これはすべてコテ細工。こちらのコテ職人の腕は抜群。大理石と見えるものは全てコテ細工である。すごい腕前である。

どう見ても、色大理石に見える。しかし、私は人造石だと推測する。ホテルでも壁は色大理石状に仕上げてあるが、すべて漆喰である。所々剥げているので間違いない。

それにしてもすごい仕上がりだ。

街中の小さな公園のベンチとその舗装。

街の中の彫刻。少しデフォルメされているが、見る人が見れば、誰を表しているかよくわかるに違いない。

これは、街中に置かれたリアルなブロンズ像。老人と少女。物語の中の登場人物だろうか。

老人の表情。

ゲディミナス塔と言われる城壁の一部。普段は登れるようだが、ちょうど修復中で近寄ることもできなかった。

 

リトアニアはなんといってもジャガイモの国。何はともあれ、ジャガイモ料理の代表格ツェペリナイに挑戦(写真左)。ところが出て来たのは、写真左上のボールいっぱい8個の大きなツェペリナイ。写真手前がその一つだが、プリプリしてこれがジャガイモかという驚きの食感で悪くはないのだが、なにせ大きく、これ一つだけでお腹いっぱいになってしまった。要注意。

写真右は冷たいボルシチ。ボルシチといえば、ロシアのビーツというカブを使った赤いスープだが、夏の間はこれに牛乳の白を加えてピンク色の冷たいボルシチを飲むのが普通らしい。一瞬飲むのをためらうほど強烈な色だった。しかし、ここへ来たからにはいちどは味わいたい。

 

リトアニアの首都ヴィリニュスは徹底した煉瓦の街であった。街の中の一般の住宅から教会、城壁まで、すべて煉瓦造であった。たぶん石材が入手できない土地なのであろう。しかし煉瓦を使った建築の技術は驚かされるものが多かった。そして、その煉瓦を覆う漆喰のコテ細工の技術も素晴らしいものであった。

この街の建築の見所は、煉瓦と漆喰のコテ細工だった。

 

案内する人

 

宮武先生

(江武大学建築学科の教授、建築史専攻)

 「私が近代建築の筋道を解説します。」

 

東郷さん

(建築家、宮武先生と同級生。)

「私が建築家たちの本音を教えましょう。」

 

恵美ちゃん

(江武大学の文学部の学生。)

「私が日頃抱いている疑問を建築の専門家にぶつけて近代建築の真相に迫ります。」

 

■写真使用可。ただし出典「近代建築の楽しみ」明記のこと。