バルト三国の中でエストニアの首都タリンは、最も城壁がよく残っている街であった。少し歩くとどこへ向かっても城壁にぶつかる街であった。
ホテルを出て街の中心部へ出て行くと、切り妻の三角形が鋭く空を区切り、街路は観光客でごった返していた。
突然、大きな空が広がった。市庁舎広場へでたのだ。
市庁舎広場を取り囲む家々は、思い思いのファサードを誇っており、家の前はレストランのオープンテラスになっていた。短い夏を楽しむため、人々は必ずオープンテラスで食事をする。
一段と大きな建物が市庁舎だ。しかし、その大きさは廻りの家々とほどよいバランスを保っている。広場と民家と市庁舎のバランスがじつによい。
建築のサイズ感がじつに快いのだ。
市庁舎は廻りを圧倒するほど大きくはないし、タワーは非常に高いのだが、細く美しい。
この市庁舎は今から600年ほどまえに完成したという。
この市庁舎は完全に公開されているので、2階のホールに入り、屋根裏に登り、さらに細い螺旋階段をくるくると登ってタワーからの街の景色を楽しんだ。
2階の「市民の間」、現在も市の賓客を迎える時に使われているという。
天井のとんがりアーチを縁取る素朴なラインが面白い。
じつに素朴な彩色が施されているが、青と黄がハンザ同盟を、緑と赤が富と力を表しているという。
屋根裏も見せてくれる。
壁は石造だったが、屋根は木造であった。非常に多くの真直ぐな木材が使われていた。入ってみると、その大きさに驚かされた。
ここまでくる人はほとんどいない。
窓からは足元の街を見下ろすことができる。
よく似た家並みが続くが、その向こうに海が見え、豪華客船が停泊していた。
広場と取り囲む家々。
市庁舎の玄関扉。
街の建築
街の建築、個性豊かですね。
こんなに自由な造型も。
いたるところにこんな細い路地がある。
レストランのファサードが味わい深い。
個性的な建築を発見。
入口まわりもすごいことになっている。
近づいて見ると翼のあるトカゲらしい。なんともユーモラスな表情であった。
膨らむ壁を内側に引っ張るために壁の外に留めの金属が必要だが、それを装飾にしてしまったようだ。
看板も魅力的だ。
避雷針も手が込んでいる。
歩道はレストランのテラス席に変貌。不法占拠??
城壁の切れ目があった。これで、城壁の厚さがわかる。
長年にわたり、城壁は作られてきた。大きな石を積んだわけではない。小さな石をコツコツと積んでいったことが分かる。
日本の城の石垣と比較してみたくなる。自然条件の差が技術を育み、異なる文化を育ててきたことを想像してみる。
城壁と塔の列。
城壁の出入り口
トームペアという高台の城壁。ここの城壁には登ることができ、歩くこともできる。
城壁の回廊
ここだけ四角い塔ネイツィトルン。中世には売春婦の牢屋だったので「乙女の塔」と呼ばれていたそうだ。いまは、大きな窓がつけられて、カフェ、展示室、などに使われている。
中のカフェの椅子。ユニークなデザインだ。
中世の甲冑などが展示されている。
部屋ごとにインテリアがことなり、椅子のデザインも異なる。
最上階のカフェ。椅子のデザインもすっかり異なる。
この街の城壁と塔の模型。
ここにはロシア正教の教会がある。ロシアがこの国を支配していた1901年に作られたもの。トームペアというタリンの象徴的な重要な場所に建っており、エストニアの国民にはかなり目障りな存在らしい。
内部もアーチがつらなり、なかなか堂々とした建築である。この街にも一定の数のロシア人が居住している。エストニアの人々は今もなお、ロシアからの軍事的な侵略を恐れている。
高台の展望台からは市内が一望できる。
城壁に沿った裏通り。
城壁と路地
城壁に開けられた門。
聖ニコラス教会。13世紀にドイツ商人の居住区にできた教会だという。
非常に興味深いファサードだ。
1994年にソ連の空襲で焼かれてからの再建なので、内部は素っ気ない。
背中に乗った重そうな玉は何を意味しているのか、興味深い木彫。
教会の一部は博物館になっており、かつてのハンザ同盟で繁栄していたこの街の豊かな財宝がこれでもかと壁面を飾っていた。
かつての商人たちの豊さをよく示している。
1982年に火災で焼け落ちたそうである。ゴシックの塔がこのように壊れるのは驚きであった。
城壁の中は、完全な歴史的建造物の保存地区になっているようで、近代建築は一切目に入らないが、城壁を一歩外にでると、その反動のように大胆な近代建築が目に飛び込んできた。
タリンからヘルシンキへはこの船でバルト海を横切る。
エストニアの首都タリンは城壁の街であった。
他の2国はほとんど城壁を取り払ってしまったのに対して、この国はほとんどの城壁を残し、独特の景観を維持している。ウィーンなど多くの国が城壁を撤去して近代化を推進してきたのに対して、この国は頑に城壁を守り通し、今では貴重な歴史遺産となっている。
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